鹿月秋の晴耕雨読

鹿月秋(from-origin design)の、他愛もない、そして、くだらない日常を無駄な長文で綴っています。
鹿月秋の晴耕雨読

SEARCH in this site
SELECTED ENTRIES
RECENT COMMENTS
CATEGORIES
ARCHIVES
PROFILE
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | - | - | - |
涙の、わけ
いつもよりも、ずいぶん遅くに目を覚ました。

ダイニングに座り、ぼんやりしていると、
突然に、涙が、こぼれた。

悲しくないのに、なぜだろう。


そうだった。

朝早くに、足がツッタんだった、
しかも、両足。

たしかに、泣けるくらいに、
痛かった。

| 鹿月秋 | - | comments(0) | trackbacks(0) |
思い出のビストロ料理に、カレーライスは含まれていなかった
 思い出の、料理がある。

それを初めて食べたのは、出町柳にあるビストロで、
私がビストロ料理に開眼した店である。

前菜に、田舎風パテ、
主菜に、カーン風トリップを注文した。

この、カーン風トリップを食べた瞬間に、
私は、あまりの感動のあまり、アゴが、
ガクガク鳴った。

比喩でも、冗談でもない、
本当に、アゴがガクガク鳴ったのだ。

この料理は、牛の内蔵とお野菜のシードル煮込みである。

元来、内蔵料理は、好きなのだ。

血の味がするものは、たいてい、好き。

同じ理由で、仔羊肉や、鴨肉も大好きなのだ。

今はもう、口にすることは難しくなったけれども、
レバ刺しだって、もちろん、好きだ。

カーン風トリップ、
思い出しただけでも、よだれが出そうだ。

こういった、古典的な料理が好きで、
それは私の懐古主義にも由来するのだろうけど、
クラシックなものに、私は、弱いのだ。

自分で店を持ったときには、内蔵料理を
メニューにラインナップしたい。

疲れた時には、内蔵料理だと、相場が決まっている、
そうですよね?


今日は、まぁまぁ、ヘロヘロに疲れて帰宅した、
バスルームの水漏れも、しとしとレベル、
もう、大したことはない。

今夜はカレーライスだ。

賞味期限の怪しい卵があったので、
オムレツを焼いて、カレーライスにトッピング。

もちろん、お相手は、赤ワインと、オジュ、
それから、らっきょう。

ベストな組み合わせ。

カレーに鶏のレバーが入ってて、
コクをアップ!

いえ、普通に鶏のもも肉だけです。

BGMは、パヒュームのJPNというアルバム。

ご機嫌です、午前3時。


そして。

今日の、お昼も、カレーライスでした。



私は、クラシックな料理が好きだ。

この日本において、カレーライスも、
もはやクラシックの領域だと思うんですけど、
どうかしらん?
| 鹿月秋 | - | comments(1) | trackbacks(0) |
水漏れオペラ
 「ぼくの伯父さんの休暇」を読んだのは、
たしか、18歳くらいの時だったと思う。

その中で、私が気に入った登場人物は、
「ぼく」と「おじさん」が南フランスへ
ヴァケーションに出かけた時に出会う
おばさんだった。

彼女は、海岸に現れたクジラには、
興味を示さず、ほかの人々がクジラに
興奮しているにも関わらず、
「素敵な風が吹いているわ」とか、
ごく、ありふれた事に感動する人だった。

当時の私は、彼女みたいな人になりたいものだ、
と思った。

そういった、日常のナニカに感動できる人に
なりたい、そう思った。

仕事が終わり、真っすぐに帰宅した。

ドアを開けると、水の音がする。

私は焦った、
しまった、と思った、
洗面台の水を流したままだったのか、と。

慌てて、バスルームへと向かう。

蛇口は、閉まっていた、
代わりに、バスルームの天井から、
かなりの量の水が落ちている。

水漏れだ。

私は、踵を返し、上階へ上がった、
まずは、真上の部屋のチャイムを鳴らす、
反応がない。

その向かいの部屋のチャイムを鳴らす、
時刻は、深夜の1時半である。
もちろん、反応は、ない。

仕方なく、自室へと戻る、
バスルームの水は、軽いシャワーみたいである、
これが夏ならば、「水道代が浮いたな」と言って、
そのままバスルームへと飛び込んだかもしれないが、
季節は、まだ、冬である、さすがに、それは
思いとどまった。

時間が気になったが、2階に住む管理人に
電話をする。

なかなか、出ない、
仕方のないことだ。

しばらく待つと、眠たそうな声が返ってきた。

事態を伝える。

管理人が、走ってくる。

その間に、階下に住む友人に、メールをする、
水漏れ、していないか?と。

彼女は、こちらは大丈夫だと言う、
とりあえず、良かった。

管理人が、バズルームへ入る。

「一度、スペア・キーを持ってきて、
上階に行きます」
と言う。

よろしくお願いします、と私は懇願した。

そして、12月から、突如はまっているオペラのCDを
室内に流しながら、昨夜、残していた食器を洗い始めた、
お腹も空いたので、うどんも作る。

オペラは、いい、
心が落ち着く。

それまで、クラシック音楽には興味がなかったが、
オペラは、素晴らしい、なんと心地の良いミュージック。

1968年録音のベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団、
指揮者は、カール・ベーム、モーツァルトの
「フィガロの結婚」だ。

映画「ショーシャンクの空に」にも使われている。

優雅な気持ちで、水漏れとオペラの二重奏。

悪くないな、と思う。

いや、状況は、悪いのだけれども、
気持ちの有り様が、悪くないのだ。

電話が鳴る、
上階に侵入した管理人からだった。

「こちらは、水を止めました、
バスルームの天井のフタを開ければ、
すぐに排水できます」

言われるままに、天井のフタを開けてみた、
水が、ドバッと落ちてきた。

濡れた、
ずぶ濡れ。

女性のソプラノの、伸びやかな歌声が、聞こえる。

火にかけすぎて、うどんも、伸びた。

いま、午前3時を過ぎて、天井からの水は、
ほとんど、落ちてきていない。

オペラは、第3幕に突入した、
間もなくで、「手紙の二重奏」だ。

オペラは、いい、
心が、落ち着く。

きっと、「ぼくの伯父さんの休暇」に出てきた、
あの、おばさんの頭の中にも、いつも、オペラが
流れていたのだろう。

私は、上階に住む人に、悪態をつくことさえ
思いつかず、伸びた、うどんを食べ、
夜中に起こしてしまった管理人に、
少しばかりの気遣いの言葉を述べることができた。

オペラは、私の心を癒す。

パヒュームは、私の心を、潤わせる。

明日の朝は、パヒュームを聴こうかと思う。


| 鹿月秋 | - | comments(0) | trackbacks(0) |
薮入りだって、構うものか!
 「ああ、薮入りだね、それは」
と、昭和10年生まれの、その女性は、言った。

薮入りって、なんですか?
と私は、聞いた。

「そんなことも知らないの?」
と彼女は答えた。

知らなかった。

調べてみた。

妻が、妻の実家に帰ることを言うらしい、
語源は不明だが、何となく、日本語らしい、
奥ゆかしさが漂っている。

イメージする。

薮とは、おそらく、見通せないという意味だろう、
つまり、妻が妻の実家に帰れば、そこは、一つの
治外法権みたいなもので、私からは、よく見えない。

薮に入る。

そこで交わされる罵詈雑言は、薮の外には
聞こえてこない、私には、聞こえてこない。

妻が、「今夜から実家に帰ります」
と今朝、宣言した。

「日曜日までは帰ってきませんからね、
あなたは、自由にして良いのですよ」

自由。
素晴らしき言葉。

そして、私は、その言葉で、私が不自由であることを知る。

妻が実家に帰るときは、たいていの場合、
仕事が忙しいか、お金がないか、どちらかであり、
そうでなければ、その両方である。

つまり、私は、目の前にある自由を見つめながら、
結局は、自由を謳歌できない構造になっている。

睡眠時間を削るか、財布の中身を削るか、
どちらかの選択をしなければ、ならない、
あるいは、その両方を削る覚悟が必要なのだ。

今月は、アパートの更新月で、まとまったお金が
必要なのだ。

財布の中身には、500円しか、入っていない。

私は、心の中で叫んだ。

構うものか!

それが、どうした!

構うものか!

私は自転車を走らせた、
友人の店へ。

世の中は、ヴァレンタイン・デーだったらしい。

その中に、一人で入っていく勇気はなかった、
その代わりに、深夜営業しているスーパーで
キノコをたくさん買った。

構うものか!

私は、ワイングラスに、安物の箱ワインを
なみなみと注いだ。

パヒュームのCDを大音量で聞く。

構うものか!

睡眠時間を削り、財布の中身を削り、
魂を削り、私は、夜の薮の中へと進もう。

うん、明日こそは、夜の薮の中へ、
今日は、やめておこう、
洗い物なら、ずいぶん、ある。

まずは、そこから、はじめよう。
| 鹿月秋 | - | comments(0) | trackbacks(0) |
ありがとう、日本「再」鎖国
 彼に出会ったのは、今から、およそ、10年前。

同じ職場に勤める同僚で、彼とは、3ヶ月しか、
一緒に働かなかったが、妙に馬が合った。

週に5日くらいは、飲みにでかけ、酒場で出会った
女の子たちと共に、朝までビリヤードをした。

ルールは、一つ、
相手の名前も連絡先も、聞かないこと。

理由は、ない、
ただ、その夜を満喫できれば、それで良かった。

彼と飲みに出ると、必ずと何かの議題について、
真剣に話し込む。

昨夜の議題は、「グローバル・スタンダード」だった。

少し前に、テレビから、女性が、こんなことを言っていた。

「日本は、グローバル・スタンダードを目指すべきでは、ない」
と。

驚いた、
私と同じ意見だったからだ、
それをテレビで、しかも女性が言っているなんて
面白いな、と思い、出勤の準備をしている手を止めて、
画面を見ると、そこに映っていたのは、フィフィだった。

彼女曰く、
「日本には素晴らしい文化があるのだから、
わざわざ、それを壊す必要はない、
むしろ、日本独自の文化を守っていくべきだ」

まさしく、私と同じ意見だったので、それを
彼に紹介すると、

「分かる!めっちゃ分かるわ、それ!
フィフィっていうのが、また面白い!」
と言って、彼は熱燗を口に運んだ。

そして、「最近、読んだ本で、戦前に書かれた、
日記なんだけど、それは在日イギリス大使館の
奥さんの日記で、そこにも同じようなことが書いて
あったぜ」
と彼は言った。

そこにある日本人は、実によく笑い、
冗談が好きで、着ている服も、おしゃれだった、
と書いてあったのだそうだ。

私は、できれば、日本に、もう、一度、鎖国してほしい、
と言った。

こういった、話題は、あまり、他の人にはしないように
している、なぜなら、理解してもらえないからだ、
彼は、私と同じ懐古主義者なので、この手の話題には、
飛びついてくる。

「いいね!俺も、その意見に賛成だな、
日本独自の文化を発展させれば面白いに違いない」

私たちは、日本「再」鎖国、という夢物語を語り合った、
いつもの風景だ。

ある経済学者によると、人口が1億人いれば、
自国内だけで、十分に経済が回る、という試算が
ある、というのを、どこかで読んだことがある。

であれば、日本は、グローバル・スタンダードになんか
目を向けずしても、国として、機能することができることになる。

もっと、日本の文化を愛そう、という結論に至ったのは、
午前6時まで、あと15分というところで、日本酒の
一升瓶の8割まで飲んだところだった。

「さぁ、そろそろ、帰るわ」
と彼が席を立って、

「ありがとな、楽しかったわ、またな」
と、いつもの、あいさつ。

おう、こちらこそ、ありがとう、楽しかったよ、
と私は答えた。

そして、いつもと、違うことが、二つ。

一つ、
私たちは、別れ際に、ハグをした、
たぶん、彼とは、初めて、そして、力強い、ハグ。

もう一つ、
彼は、帰る、
いつもの、彼の部屋ではなく、
故郷の、福岡へ。

彼と出会って、およそ、10年。

いくつもの夜を、酒と笑い声とともに、
過ごした。

深夜に、突然に、「今から、飲もう」なんていう
誘いは、もう、なくなってしまうだろう。

でも、私たちの関係性は、生涯、なくなることは、
ないだろう、それだけは、絶対に、ない。

私たちは、いつもと同じように、
「ありがとう」、うん、ありがとう、
と言って、わかれた。

私は、今一度、彼に向かって言おう、

ありがとう

君と過ごした、夜に。
| 鹿月秋 | - | comments(0) | trackbacks(0) |
<new | top | old>